概要・沿革

音楽教室の理念 Philosophy

1948年(昭和23年)、桐朋学園音楽部門の創立者たちは新たな音楽教育の未来を、無限の可能性を秘めた子供たちに託しました。音楽の才能を伸ばすには早期教育が重要であるとの信念から、子供の音楽感性を最大限に育成するために「子供のための音楽教室」が設立されました。まさにこの音楽教室の教育にこそ桐朋学園音楽部門の教育の原点があります。音楽教室設立に際して発表された「子供のための音楽教室開設趣意書」(下記)には、音楽部門の教育の理念が明記されております。

音楽教室での教育は子供たちの感性を育成し、さまざまな形でその才能を開花させることを目指しております。この自然な感性の育成と同時に、音楽教室の創立者たちは生徒たちにそれぞれの能力に応じた厳格で徹底した指導を施し、完成された高い音楽水準の達成を目指しました。そしてその指導を受けた生徒の中から、国際的に優れた音楽の専門家が数多く輩出してきていることは改めて申すまでもありません。
子供たちの優れた才能を見出し、その才能を開花させるためにあらゆる手助けをするのが「子供のための音楽教室」の重要な役割であり、その精神が現在も確実に継承されています。

実技

古典を学ぶことによって共通語としての音楽上の文法を習得していくことが大切です。そして子供たちには、真の個性を持った音楽家へと成長していってもらいたいと考えています。
技術的な訓練も重視します。基本的な技術の訓練が大切であることは、音楽も美術も演劇もスポーツも全く同じであると言えます。音楽的センスと演奏技術は常に表裏一体であるからです。

ソルフェージュ

ソルフェージュはクラシック音楽の勉強の根本です。一口にソルフェージュといっても内容は極めて多岐にわたりますが、その目的は「楽譜から何を読み取るか」ということに尽きます。
音符の高さと長さを読み取る最も初歩の段階から、楽譜という記号の中に込められた音楽を感じ取り、作曲家の精神的メッセージまでも理解しようとする高度な段階まで、その内容は実に多様で奥深いものです。
音符を読んで、自分の声で高さや長さを確認し、音を聴いてそれを楽譜に表してみるという作業・訓練を積み重ねることによって、楽譜という記号から生きた音楽を「想像すること」ができるようになるのです。演奏するということは、それを「音に表すこと」なのです。

アンサンブル

実技の徹底した個人指導と並行して、アンサンブル教育は音楽教室創立当初からの方針の一つです。 音楽は個人プレーばかりでなく、他の人の奏でる音に耳を澄まし、自分の音を全体の中の一部分としてとらえ、バランスを考えながら完成させていくという行為でもあります。子供たちにはアンサンブル教育を通してアンサンブルの楽しさや難しさを知ってもらいたいと考えています。

桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」の目指すところは、趣意書にもありますように、早期教育による豊かな音楽教育です。
「夢と憧れ」を持って音楽教室で一生懸命学んだ子供たちが、優秀な音楽家として巣立っていくこと、あるいはクラシック音楽を支える聴衆の一人、良き愛好家として成長していってくれることを、私たちは心から願っています。

「子供のための音楽教室開設趣意書」より

私たちの立場

「子供のための音楽教室」の運営につきまして、私たちはこう考えている次第です。

今まで私どもの国の音楽教育には、ふたつの大きな欠点がありました。

  • (1)教育を受けはじめるのがおそすぎる。
  • (2)音楽の知識を習うことが軽視されるか、さもなければ抽象的にだけおこなわれた。

 音楽の教育は、幼い時からはじめればはじめるほど、楽に、確実に、高いところまで進歩できるということは、古今の名音楽家といわれるような人が、ほとんど例外なくそうした経験をふんできたことをみても明らかな事実です。

 しかし、ただ早くはじめたというだけではたりません。音楽では、文学などにくらべて技術的な要素が、非常に重要な役割をもつと同時に、知的な面の勉強も、あくまで耳の感覚を通して得られた、具体的な、身についたものでなくてはなりません。ところが、今までは、子供に音楽を教えるための総合的な施設がなかったため、音楽を学ぶものが、とかく晩学のかたむきがありましたし、特に楽典その他の理論や音楽史などの知識は、ただ本から頭につめこむだけというありさまでした。

 これではたとえ、楽器を機械的にひきまくる人はできても、高い音楽的思考力をもった音楽家の出現は期待できないわけです。

  • 1.なるべく小さい時から、正規の教育をはじめる。
  • 2.聴音教育をおこなって正しい音感(旋律やハーモニーやリズムを正確にきき分けつかみとる力と、音楽、つまり本当に音楽的な音とは何かについての感性)を育てる。
  • 3.以上と平行して、順をおって理論や知識を組織的に教える。
  • 4.演奏のさまざまなスタイルを区別し、各生徒が自分に本当にぴったりしたスタイルで音楽する力をつける。
  • 5.個人演奏だけでなく、合唱、合奏の訓練をする。

このために、私たちは、児童の教育に十分な経験をもった良心ある音楽家を教師に依嘱しました。私たちはこのほか、必要に応じ、特別講座を開き、生徒向けのものばかりでなく、父母の方々や、一般の成人のための音楽講座を開設いたしたいと思っております。音楽教育ばかりでなく、広く日本文化の前進に深い関心をもっていらっしゃる方々の力強い御協力と御支持とを心からお願い致します。

昭和23年9月
子供のための音楽教室
吉田秀和 井口基成 斉藤秀雄
伊藤武雄 柴田南雄